飛島まんすけ・ブログ版【3】さらば飛島、、、、兵糧攻め。。。(2003年GW、飛島・山形県酒田市)


2003年GWの、飛島旅行記の第3話です。
島内2泊3日の滞在も、いよいよ最終日。。
1日1便の船に乗って帰るだけだったのですが、
なかなか、一筋縄では行かなかったんです。。。
さてさて、何が待っていますのやら。
いちおう【フィクション】ですので、お忘れなく。。

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23年前のオハナシですので、交通機関や島の状況など、
当時とは大いに変わっている事と思われます。
なので、観光情報としての価値はありません。
ウソかホントか判らないヨタ話として、お楽しみ頂ければ幸いです。
(基本は原文ママですが、難読箇所などは修正しています)
=========== 以下、本文 ===========

さて、そんな飛島から、いよいよ去る日がやってきました。
帰りの船の出発は昼過ぎ。
酒田から来る便の折り返しで、始発便でもあり最終便でもあるのです。
数々の思い出の仕上げとしては、やはり最後は西村食堂のサザエカレーなのです。
ところが・・・・・・
何と言う事でしょう、西村食堂が休みなのです。
これは困った事になりました。

実は西村食堂以外にも、もう一箇所だけ、メシが喰える所があったのです。
勝浦港のターミナルの3階に、うどんなどの簡単なメニューと、
ちょっとしたオミヤゲを売っているコーナーが存在しているのですが・・・・
そこも見事に、今日は閉まっているのでした。

実は、世間一般のゴールデンウイークは前日で終わっていました。
帰りの混雑を避ける為に一日延期したのが、見事に仇となったのです。
たった一日とは言え、
観光シーズンを外れた離島の現実が、我々に襲い掛かってきたのでした。

酒田に帰り着くまでの船中を空腹に耐えて過ごしさえすれば、
一食ぐらい抜いたってどうにかなる訳はありません。
しかし、何よりも残念なのは、目をつけておいたオミヤゲを買えなくなってしまった事でした。
それは『イカのまんすけ』という、饅頭なのです。
見た目は、完全無欠なる『くりまんじゅう』なのです。
そうです。誰もが知ってる、全国共通のアレです。
もうパクリとしか言いようが無い外観なのです。
しかし『まんすけ』は、『くりまん』のニセモノではありません。
中身が全然違うのです。
なんと、イカ味で醤油仕立てのアンコなのです。
それが、甘さを抑えた、ヒジョーにシビレる美味だったのです。

『イカのまんすけ』の存在は、ターミナルのポスターで知りました。
ついつい買ってみたら、魅了されてしまったのです。
そしてあっというまに食いつくし、オミヤゲにも買って帰ろうと心に誓ったのでした。
てっきり本土の製品で、飛島でも売ってるだけだと思ったのですが、
なんと製造販売元が、あの西村食堂なのです。
正真正銘の飛島銘菓だったのです。
ますます気に入ってしまったのです。

名前が違うだけで、どこに行っても同じようなモノがある
『●▼の月』なんぞは、『まんすけ』に土下座せねばなりません。
また、地方色や奇抜さに拘るあまりにマズくなってしまった『×△■○』も、
もちろん土下座です。
とにかくとにかく、『まんすけ』はエラすぎるのです。
でも、買えないのです・・・・・

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昼近くになり、ターミナルの周辺が騒然としてきました。
みぃんな、喰えると思っていた昼飯からあぶれた事に気が付いたのです。
乗船客の殆どを占めるバードウォッチャー達は、2~3人ずつが組になって、
あたりを徘徊しておりました。
「そっちは喰えるところ見つかった?」
「無い。そっちは何かあった?」
そんなアンバイです。
西村食堂、ターミナルの軽食、そしてプレハブの土産物屋・・・
全てが閉ざされている今、喰えるものがある訳がありません。
何件かの商店は、相変わらず北朝鮮デパート状態です。

やがて諦め、ターミナル前の芝生にへたり込む者・・・・
往生際悪く、アッチコッチをふらつく者・・・・・
物欲しそうに旅館の玄関先を覗き込む者・・・・・

ワタクシは、最後のチャレンジに出ました。
もう誰も乗る者の無い酒田市無料レンタルチャリに跨ると、勝浦港を背にして走り出しました。
泊まってた旅館に飛び込み、せめて、せめてビールだけでも入手しようと考えたのです。
「すいませぇん、ごめんくださぁい」
いくつかの旅館の玄関先で叫んでみても、誰一人出てきません。
道を挟んだ海側では、島のオバチャンオジチャンが入り乱れて、
なにやら海草の加工に勤しんでおります。
キィコォキィコォなどと音をたてながら、海草を裁断する小さなマシンが
アチコチでフル稼働してました。
島の全ての人々がその海草に集中し、
いまさら帰る観光客などにはかまっていられないといった状態に見えました。

ただ一人、軒先のイスに座って、そんな光景を眺めているだけの
サングラスをかけたオッチャンが居ました。
作業を監視していると言うよりも、もう何もやる事が無いといった雰囲気で、
あまり身動きすらしないオッチャンでした。
なんだか浮いてる存在のオッチャンが気になり、ついつい視線を向けると・・・・
おうっ!!
看板も何も無いので判り辛かったのですが、オッチャンが座っているのは明らかに店先で、
しかもガラスの冷蔵庫にはビールなどが並んでいるのが見えたのです。

吸い寄せられるように店に入り込もうとすると・・・・・
そのオッチャンは片足がありませんでした。
オッチャンは、明らかに店に入ろうとしているワタクシの存在などには全く関心を示さず、
絵本の海賊のような棒だけの義足姿で、ひたすら海を見て座っているだけなのです。
ワタクシは、ほんの0.8秒ほどひるんだだけで、かまわず店に入り込みました。
なぜなら、奥の棚に『イカのまんすけ』が並べられているのに気が付いてしまったからなのです。

ワタクシの手が『まんすけ』に触れるのとほぼ同時に、
オッチャンは、体も、そして顔も海のほうに向けたまま
「オイッ!!」
と一言叫びました。
妙に低く、そして重々しい声でした。

アセりました。ビビりました。
恐る恐る、店先のオッチャンに視線を向けると・・・・・
オッチャンの背中越しに、海草を加工している集団の中から、
一人のオバチャンが小走りにこちらに向かってくるのが見えました。
「いらっしゃいませ」
オバチャンは、あまりサービス業的ではない口調で、
ワタクシがカウンターに置いたルービ、ポテチ、
そして『まんすけ』をひとつひとつゆっくりとレジに打ち込んだのでした。

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まだまだ諦めきれずにない右往左往する人々を尻目に、
ターミナル前の芝生でルービとポテチを頬張りました。
「そっちは何か売ってた?」
「無い。そっちは?」
彼らに、あのオッチャンの店を紹介するには、もう時間が無さそうです。
なぜなら、沖に見えるニュー飛島丸の姿が、もう大きくなりすぎてきたからです。
果たして、あの船には何人の観光客が乗っているのでしょうか。
時刻的には、昼飯を喰い終わっている人は少なそうです。
予約制の旅館の昼飯を注文していない人々は、上陸後に呆然とするに違いありません。
そして、何人かはオッチャンの店に辿り付けるかもしれません。
もっとも、カワキモノしか売ってませんが。

 ~ 孤島に向かう連絡船には、『都会の常識』を持ち込んではいけない。
 そして上陸後は、如何なる『不可解』な、『理不尽』な境遇に晒されても、
 それに憤慨し、我が身のフビンさを嘆いてはいけない。
 島民の側から見れば、気まぐれに訪れ、そして去っていく我々の行動こそが
 『不可解』『理不尽』であり、その理解に苦しんでいるのだから ~

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この地図は「日本の島へ行こう」より。
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この記事へのコメント

  • narayama2008

    こんばんは。

    孤島だと食事をしたいお店が休みだと、じゃあほかの店でというわけには簡単にはいかないのですね。
    それでも最後のチャレンジで「まんすけ」を確保できたのは良かったですね(^^)
    2025年10月13日 22:47
  • おぎひま

    narayama2008さん、コメントありがとうございます。


    この島を訪問した際には、
    「ココは究極の離島なのだ」
    などと認識したのですが、、
    後に、それは思い違いである事が判りました。
    店があるだけマシでして、
    もっとディープな島に、いくつも上陸しました。。
    2025年10月14日 09:00
  • ゆけむり

    なるほど、「いかのまんすけ」だったんですね
    くりまんかと思いきや、イカ味で醤油仕立てのアンコですか???
    う~ん、食べてみたいようなみたくないような(^_^;)

    ところで『●▼の月』は分かりますが、『×△■○』は何なんでしょうか?
    月シリーズは本場以外にも美味しいのがあり、山口の月でひろった卵などはなかなか美味いですよ(笑)
    白い恋人のパチモンはたくさんありますが、本家がダントツに美味いですよね
    一時自分もパクリ土産で変わったネーミングの物をわざわざ買ったりしましたが、そう言えば最近はほとんど買わなくなってしまいました
    遊び心が無くなった証拠でしょうね・・・
    2025年10月16日 15:14
  • おぎひま

    ゆけむりさん、コメントありがとうございます。


    えっと。。。
    『×△■○』は思い出せません。
    なにぶん、昔の文章ですから。。。
    今、改めて考えれば、、、
    個人的には、地ビール系に、そういうのがあるように思えます。
    焼酎とかも。
    もちろん、全てがヨロシくない訳ではありません。
    ウマいやつはウマいです。。
    2025年10月17日 10:24

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