まぼろしグルメ・ブログ版(2007冬・糸魚川)


ただひとつ「何から何までJRで移動し、完全無欠の鉄道旅行」としたのが、
糸魚川までマボロシのカニを食べに行く旅でした。
それが、どんな内容だったのか、、、、
メインサイトの中から、16年前の文章を拾ってきました。
北陸新幹線の開業など、当時とはイロイロと状況が変わっていますから、
情報としては使えません。マヌケな昔話としてお読みいただければ幸いです。

arai.jpg

【以下、概ね原文ママ。ほんの一部修正あり】

話は2005年のクリスマスの3連休に遡る。
チームぽっぽや一向は、年末年始スキーの下見と称して、ARAIスキー場に集結していた。
年末年始の行き先は志賀高原なので、下見と言うのは全く矛盾している。
要は、ただただスキーに行く為のノーガキなのだ。
そんな意味なし行動にバチが当ったのか、連休の中日からARAIのゲレンデは吹雪に包まれ、
んもぉ目も開けていられない状態となり、早々と下山して宿に待避する。
追い討ちをかけるように宿の駐車場にも大雪が積もり・・・・
翌朝、埋没したクルマを掘りかえしながら、誰ひとりゲレンデに向かう気力など無い。
「スキーは、ルービを美味しく呑む為の小道具」
などと真顔で論じ合うへたれスキーヤーの戦意を喪失させるには、十分すぎるシュチュエーションだったのだ。

「もう帰ろうぜぇ。ブッ殺すぜぇ」
「あったりまえだ。ゲレンデに行ったって苦痛なだけだ」
「せっかくだから、なんかンマいモノ食って帰ろう」
おごそかにるるぶなどが取り出され、それを覗き込むノンベェどもの目に留まった物体・・・・
それが今回の主役、小伏(こぶせ)ガニだったのだ。
カニの甲羅を繰り抜き、そこにカニご飯を詰め、カニミソがタップリと和えてある。
そんな写真に興味を示し、さっそく紹介されていた糸魚川市の寿司屋にデンワをしたところ、
「な・なぜ、ウチでソレを出してるって知ってるんですか?」
などと、オドロキの反応。
なぜって言われても、るるぶに載ってたからに他ならないのだけれど、どうやら裏メニューらしい。
そうと判っては、もう食うしかない。
スキー道具をまるで邪魔者のようにクルマにブチ込み、ソッコーで糸魚川に向かったのだ。


そして一年後。 これから正月休みを向かえようとする2006年の暮れ。
チームぽっぽや一向は、例によって志賀高原に向かっていった。
我が家はカミさん御懐妊につき、このシーズンはスキーなど行ける訳が無く、
「せめてシミジミと雪景色を眺めつつ、ウマいモノを食ったってバチは当るまい」
そんなささやかな夢と希望をかなえる案として浮上したのが、
「再び、あの小伏ガニを食おう」
という作戦だった。
どうせ食うなら、ヒルメシとして立ち寄った前回よりもグレードアップし、酒も呑みながらキッチリと楽しもうではないか。
その為に糸魚川に宿を取り、行き返りの道中もルービを呑もうと新幹線を予約し、それでいて目的はカニを食うだけ。
なかなかゼイタクな予定だけど仕方が無い。
それほど、小伏ガニの印象はキョーレツだったのだ。

このカニが食える(漁が解禁となる)のは、真冬の一時期だけだと聞いていたので、確認の為に店にデンワ。
「えっ?こぶせガニ? どこで聞きました?」
前回と同じような反応。
「前にもお宅様で食べさして頂きまして、くどくどくどくど・・・・」
「判りました。御用意いたします。でも、その日の漁でカニが取れなきゃ作れないんです」
「そ・そりはキビシい・・・」
なにしろ冬の日本海。一度荒れだしたら何日も漁に出れないに違いない。
ダメを押すように、
「ここ3日ばかり、船は出てないんですよ」
などとノタマう寿司屋のオカミ。
なんのなんの。ココで負けてなるモノか。
年末年始、目をサラのようにして週間天気予報をチェックしまくり、そして正月休みも終わりに近づいたその日、
「今日は漁に出ました」
待ちに待ったデンワ! 遂に、マボロシの小伏ガニと再会できるのだ!
いざ出発ぅぅぅ!!

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新幹線と特急電車、そして鈍行列車まで乗り継ぎ、糸魚川の街へ。
宿に荷物をブチ込んで、いよいよ問題の寿司屋に突入。
「東京からのお客さんでしたよね? 用意は出来てます」
最後まで気になっていた点、
『漁には出たとは聞いたけど、果たしてカニは捕れたのだろうか・・・』
そんな不安が顔に出ていたのだろうか、板さんは
「ダイジョーブですよ。カニ、ありますから」
満面の笑みで答えてくれた。
待ちに待った小伏ガニは、んもぉ全身の力を抜けさせてくれる逸品だった。
しかも、前回を上回るサービス付きで、
「ミソは少し残しといてくださいよ。かにゴハンのオカワリを足しますから」
などと、1カニで2度も楽しませてくれた。
はぁ、ごくらくごくらく。

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いくら念願のカニだとは言え、ソレだけを満腹になるまで食うほど豪華一点成金主義ではない。
合わせて頼んだ地魚のニギリやらお造り、コレがまた凄かった。
ああっ、ヤバすぎる!
白エビ、目ダイ、石投げ、メクラ穴子・・・
もう、クルクルパーになっちゃうよう。

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そして、次なるマボロシが登場した。
その名はげんげ、幻魚と書いて、げんげと読むのだそうだ。
なんだかウナギを巨デブにしたような形のケッタイな深海魚で、富山湾の一部の地方のみで知られる魚なのだとか。
げんげという名の「幻の魚」というのは当て字で、元々の意味は「下の下(げのげ)」。
つまり、昔は極めて下等な扱いの魚だったのだそうだ。
そしてクセが強く、嫌いな人には徹底的に嫌われる魚らしい。
その珍しさがグルメブームに後押しされ、今や高級魚の仲間入りとなったとの事。
せっかくだから、その幻魚も注文してみた。
淡白な白身の魚で、感想はハッキリいって旨いか不味いか判らない。
ただただ
「貴重なモノを食べさしていただきました」
なんてところだろうか。
まあ、こういうモノはアチコチにあると思う。
今は高価な鯨の肉だって、我々が小学校の頃の給食にはイヤってほど登場したものだ。

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とにかく大満足で宿に帰った翌日。
この糸魚川の、もうひとつマボロシのグルメスポットを訪れねばならない。
その名は吉川鮮魚店。
知る人ぞ知る魚屋で、その二階は座敷になっていて、そこで魚が食べれる仕組みなのだそうだ。
普通の民家のようで、けっしてコギレイとは言いがたい部屋ながら、何よりもウリなのが
「激安・超ウマな新鮮な刺身が食べられる。しかもテンコ盛り」
などと聞いてしまっては、ぜひとも行ってみたい。
しかし、この店の特徴はソレだけではないのだ。
店のオバチャンの口の悪さは尋常ではなく、店の主人だろうが客だろうが、お構い無しに罵声を浴びせるのだとか。
初対面のお客様に対しても
「あんたら買うの?買わないの?買わないんだったらそこどいて!」
なんてのは序の口で、もう暴言を吐きまくるのだそうだ。
しかし、ソレも一つのウリになっているらしく、これを楽しみに来る常連客もいるらしい。
これは、ぜひとも行ってみたい。
テンコ盛りの刺身も食ってみたいし、もちろんオバチャンの暴言も気になる。

店の場所は確認済みなのだけれど、駅から徒歩という訳にはいかない距離だ。
最寄のバス亭、そして開店時刻などを確認すべく、店にデンワしてみる。
そんな問合せに対し、どんな暴言が返ってくるのだろうか。
ワクワクワクワク・・・・・
「はいっ。吉川ですけど」
フツーの口調。
「吉川鮮魚店さんですよね?」
「そうだけど」
やっぱり、フツーの口調。
「あのぉ、今日は何時から開店ですか?」
「今日かい?」
おや?なんだか弱々しい口調!
「ここんところ働きっぱなしで、もう疲れちゃったんだよ」
気の毒なくらい、ホントに疲れきった口調。
「は・はぁ・・・・・」
「今日ぐらいは休みたいんだけど、ダメかい?」
遂には、哀願の口調。
ダメかいと聞かれたって困る。
観光バスも乗り付ける人気店なのに、我が家の判断で決める問題ではないだろう。
しかし、聞かれちゃったからには答えなければ収まりがつかない。
「判りました。休んでください」
「悪いねぇ。じゃあ休ませてもらうよ。ゴメンね」
気遣いに満ち溢れた、優しい口調。

こうして、マボロシの刺身テンコ盛り、そしてマボロシの暴言はマボロシに終わってしまった。
いつの日か店に訪れるときまで、暴言オバチャンには元気でいて欲しい。
ああ、吉川鮮魚店に栄光あれ。

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【追記】
吉川鮮魚店は、2013年5月に閉店したそうです。。無念。。

この寿司屋さんは健在です。
地魚料理 すし活

この記事へのコメント

  • 凡・ハヤト

    こんにちは。
    吉川鮮魚店の閉店は残念ですね。
    2024年01月20日 10:28
  • ponies

    こんにちは。

    貴重な体験ですね、鮮明に記憶が残っているのでしょうね。
    私はヒスイ海岸でヒスイを探しましたが素人では無理見たいでした。
    ヒスイ峡ではヒスイかどうかわかりませんが持ち出し禁止の
    岩だらけでした。
    2024年01月20日 12:09
  • yona

    こんにちは。
    小伏(こぶせ)ガニってセコガニの糸魚川での呼び名かと思ったけど、カニを使ったお料理なんですね。読んでるだけで美味しそうなのがわかりましたよ。
    金沢では12月まで限定の香箱ガニが有名ですが、一度は食べてみたいものです。
    マボロシの魚ゲンゲは有名ですよね。
    ところで、おぎひまさんはよくボンビー旅行と言ってますが、十分リッチな旅を楽しんでおられますね。
    2024年01月20日 14:28
  • ジュン

    16年前・・・
    孫が誕生したかぐらい
    余り思い出せないボケたかな
    新婚から色々楽しんでいらしたのですね
    2024年01月20日 14:44
  • おぎひま

    凡・ハヤトさん、コメントありがとうございます。


    閉店は残念ですが、、、、
    うんと稼いだ上での楽隠居であって欲しいです。
    2024年01月21日 11:37
  • おぎひま

    poniesさん、コメントありがとうございます。

    足が無いのでヒスイ海岸は行けませんでしたけれど、
    なるほど、どのみち見つけるのはムツカシかったのですね。
    後に、糸魚川では大火災がありましたけれど、
    店は無事だったみたいで一安心です。
    2024年01月21日 11:40
  • おぎひま

    yonaさん、コメントありがとうございます。


    小伏(こぶせ)ガニは、ズワイガニのメスの糸魚川式の呼び方で、
    子伏ガニ と書く事もあるそうです。
    セコガニも同じくズワイガニのメスだそうですから、
    地域による呼び方違いで正解みたいですね。
    我が家はリッチでは無いですよ。。
    この時に泊まったのは、
    隣駅、、青海駅前のビジネス宿でした。。
    2024年01月21日 11:53
  • おぎひま

    ジュンさん、コメントありがとうございます。

    16年前、、、
    マナムスメはカミさんのハラの中に居ました。
    記憶力が怪しくなってきましたので、
    書き残していて良かったと思います。。。
    2024年01月21日 11:57
  • かっちゃん

    おぎひまさんの「食道楽」羨ましい。
    小伏ガニ知りませんでした。
    吉川鮮魚店の閉店は残念でしたね。
    ゲンゲは食べ損ね、暴言オバチャンには会えずじまいだったのですね。
    16年前の文章が残っていて良かったですね。
    思い出がぜ~んぶ蘇るでしょう。
    楽しく読ませていただきました。
    2024年01月21日 14:09
  • おぎひま

    かっちゃんさん、コメントありがとうございます。

    マナムスメの誕生前の、とても懐かしい話でした。
    タイヘンだった子育ても落ち着き、、寂しくもあります。。
    今から16年後は、どうなっていましょうか。。
    2024年01月22日 10:44
  • 山ちゃん

    今晩は!
    いや~あっ、記事と写真を拝見しているとコッペ蟹のようですね。料理の仕方でこんなに美味しそうになるなんて想像も出来ませんね。昔はオス蟹は高額で食べられませんでしたが、コッペは普通に食べていました。
    幻の魚と云えば、もう40年ほど前に釧路で舞茸のバター焼きと、ハッカクと云う深海魚を居酒屋で食べたのを思い出します。

    2024年01月24日 20:53
  • おぎひま

    山ちゃんさん、コメントありがとうございます。

    コッペ蟹、、、
    存じ上げなかったものですから調べてみました。。
    なるほど、やはりズワイガニのメス。
    それの、丹後地方での呼び方なのですね。
    ハッカク、、、
    これも知りませんでした。
    なんという姿でしょう! すごいヒレですね!!
    2024年01月25日 07:39
  • かにょにょ@横歩き

    🔵ナイス!

    🤤🤤🤤🤤🤤🤤🤤🤤🤤🤤🤤🤤
    言葉が出てこないくらい羨ましすぎる
    カニ、美味しいですねーーー
    (空腹夜勤中)
    2024年01月25日 22:36
  • おぎひま

    かにょにょ@横歩きさん、コメントありがとうございます。


    カニは哀れなイキモノですよ。
    こんなにウマくなければ獲らないのに。。。
    ウニもです。イクラもです。。
    2024年01月26日 08:33

  • ↓をクリックしていただけると、勘違いしてハリキってしまうかもしれません。。。
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