御所掛野郎・blog編、、、VS 置き引き犯(後生掛温泉・秋田県鹿角市)


かっちゃんのちいさな旅2」の中で、クレジットカードを失くした話を拝読しました。
届け出た警察でカードナンバーを聞かれた際、、、
カードのコピーを取ってあったので、即答できたとのハナシです。
なるほど、カード番号なんぞ覚えてないですもんね。
それだけで、その後の対応の早さが違ってきましょう。
と、納得したのでした。
実はワタクシ、、ツーリングで立ち寄った温泉で置き引きに遭い、
現金、カード類、免許証の他、バイクのカギまでもを失った事があったんです。
1円も無く、身分を証明するものも無く、バイクも動かせず、、、
ヒドいものでした。。

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その時の顛末は、メインサイトに「御所掛野郎」なるタイトルで掲載していますが、
盗難に関する部分だけピックアップし、blog版としてココにもアップします。
ずいぶん前のハナシなので、今とは噛み合わないシーンもありましょう。
携帯電話は普及しておらず、出先からの電話はテレカ(テレフォンカード)を使い、
支払いなどは現金が頼りの時代です。
また、文中の「御所掛」は、すべて「後生掛」の誤記です。
内容は原文ママ。
20年以上前の出来事なので、現在の公序良俗に反する部分はご容赦を。。。
写真は公式サイトより借用です。
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やられた!

御所掛(ごしょがけ)温泉。
八幡平の西側に位置し、色々なタイプの風呂(泥風呂・蒸し風呂など)が売り物で、湯治場もあった。
昼頃に到着して入浴し、
「いやぁ!何はなくとも温泉ですなァ!!」
などと風呂を満喫し、さっそくルービーでも! と思ったら・・・
な・な・無いぃぃ!
脱衣籠に脱ぎ入れたGパンが無いのだ。
誰かが間違って履いていくハズもなく、いわゆる『置き引き』にヤラれてしまったに違いない。
ポケットからサイフを抜き取ったりすると目立つので、何食わぬ顔でGパンごと持っていったのだろう。
それはそれでゴモットモなアイデアには違いないけれど、そのお陰で・・・・・
サイフだけでなく、やはりポケットに入っていた免許証入れやバイクのキーも運命を共にされてしまった。
そう。
遠い空の下、バイクも動かせず、1円の金も無く、身分を証明するものさえ一切無い人間になってしまったのだ。

慌てふためき、脱衣場にいた係りのおじさんに訴える。
「ケ・ケーサツを呼んでくれぇ! ドロボーだぁ!」
「ワシに言われても・・・フロントに行ってくれ」
「そんな事いったって、パンツのままじゃ行けませんよぉ!」
おじさんは何処からとも無く浴衣を出してきてくれ、それを着てフロントへ出向いて訴える。
「判りました。でもココは山の中だから、警察が来るまでに2時間位かかるよぉ!」
何時間待たされるとしても、来て貰わなければ困る。
しかし、いざケーサツが来た時に浴衣姿ってのもマヌケなので、バイクの所へ着替えのGパンを取りに行く。
「クルマと違って、キーなんか無くたって荷物は出せるのさ」
などと負け惜しみをホザきながら、ふと我が姿を客観的に見ると・・・・
浴衣姿でバイクの荷物をゴソゴソといじっているなんて、なんだかアヤシさ100%ではないか。

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ケーサツ登場!

やがて二人の刑事が登場。
フロント脇の事務所で事情聴取を受けた後、一緒に脱衣場に行くように命じられる。
現場検証を行い、写真も撮影するらしい。
「キミが脱衣カゴを置いたあたりを指さして」
記念写真ではないので笑顔という訳にもいかず、しゃがみこんだまま神妙な顔をして、そのあたりを指差す。
ポーズを変えさせられながら2~3枚の写真を撮るうちに、次々集まる野次馬。
刑事さん、お願い! 何でもするから命令口調はヤメて!
哀れな被害者なのに、なんだか入浴客から被告人みたいに見られちゃってるよう。

これで一通りの捜査は終了したらしい。
次にやるべき事は、早くカード類をストップせねばならないのだけれど、何処に電話すればいいかが判らない。
地元版の電話帳を見ても、都市銀行の電話番号など載っていないのだ。
そもそも、電話代だって無い。
「コレ、使いなよ」
ケーサツがテレカをくれる。
それは普通のデザインのテレカではなく、同僚か誰かの結婚式の記念テレカだった。
「いいんですか? これ、大事なテレカですよね?」
「いいからいいから。早くカードを止めなきゃ心配だろう」
アリガタくソレを使い、104に掛けてみる。
しかし、その銀行に「盗難窓口」とか直接的な名称の電話番号が登録されていないと、104では判らないと言われる。
仕方が無いので銀行の代表番号を教えてもらってソコに電話し、かなりタライ回しの末に、やっと手続きが終了した。

次に解決しなければならないのは、キーの無いバイクをどうするかだ。
これはケーサツが保証人になってくれて、地元のJAFが合鍵を作ってくれる事になった。
ケーサツって、自分が被害者の時には、とっても頼もしい存在なのだ。

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湯治場難民

何はともあれ一文無しじゃどうしようもなく、実家に連絡を入れて金を送ってもらう事にする。
しかし世間はGW、郵便局は休みなのだ。
「カネは送るけど、休み明けの3日後になっちゃうぞぉ!」
「親父ぃ!そんなに待てないよう。ホントはダメなんだけど、宅急便で送っとくれ!」
「判った。でもバレたらマズい事にならないかなぁ」
小心者の親父め。
旧ソ連じゃあるまいし、黙ってれば中身なんて見られる訳が無いのだ。
まさかクソ真面目な親父、宅急便の伝票に「現金」なんて書かなければ良いのだが。
とにかくとにかく、それが到着するまでの間、ここの湯治場での難民生活が始まったのだ。

フェリーの2等を思わせる大部屋は、温泉を利用した床暖房がホカホカで、居心地は良い。
しかし、ヒマでヒマで・・・・
何もやる事が無いから何度も風呂へ入る。
でも、一文無しには風呂上がりのビールも買えず、タバコの残りも少なくなってくる。
我が身の不幸を嘆きながらロビーでグッタリしていると、それを見かねたのかフロントの兄ちゃんが
「当座の金に困るだろ? これを使いなよ」
と、5千円札を手渡してくれた。
うわぁい!!有り難うごぜぇますだぁ!!
即座に売店にダッシュし、
「ビールビール」
と叫ぶと、売店のオッチャンも
「よかったね」
などとニッコリ微笑み、オツマミ用にカワキモノをサービスしてくれた。
フビンな身の上には人の情けはアリガタく、そしてこんな時でもやっぱりルービィ!!

黄昏のJAF

夕方、JAFがやって来る。
器用にキーシリンダーを外してカギの番号を確認し、
該当するキーの土台をクルマのシガレットに繋いだDC24V仕様のグラインダーで削り始める。
こちらは全くヒマなので、JAFの手慣れた作業を見守っているのだけれど・・・
2個作ってくれたキーうちの1個が、どうしても合わない。
エンジンはかけられても、燃料タンクを開ける事が出来ず、何度削り直してもダメなのだ。
みちのくの山中、次第にあたりは暗くなり、徐々に冷え込みが厳しくなってきた。
かじかんだ手を息で温めて、必死の形相でハナミズを垂らしながら頑張るJAF。
こちらもいたたまれなくなり、思わず歩み寄る。
「1個あれば良いですよ!」
しかし、後に代金は2個分シッカリと取られたのだった。

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食う寝る出す

とりあえず、全ての段取りがついた今、あとは待つだけである。
そうなると、生きる為には食わなければならない。
湯治場には自炊設備もあり、もともとキャンプの旅なので、コメは持ってるし食器類もある。
オカズは非常用のフリカケだけなのが寂しいけれど、それは仕方あるまい。
その時・・・・
「ドロボーのお客さん、ゴハンの支度ができましたよぉ!」
おおっ、何と言う事だ。
メシまで食わせてくれるとは。
連れて行かれたのは調理場のスミッコのテーブルで、従業員と一緒に質素な晩飯を頂く。
質素といったってフリカケメシよりは遥かに上等で、その内容には異存も文句も無い。
でも・・
「ドロボーのお客さん」はやめてくれぇ!
せ・せめて「ドロボーにやられたお客さん」でお願いいたしますぅ!

さすがに晩飯時のビールはガマンする。
メシが終わっても従業員には仕事が待っている訳だし、そんな状態で一人で呑む訳にはいかない。
あくまでもカワイソウな被害者を演じ続けなければ、お情けの御飯のオカズも変わってしまうかもしれないし。

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さらば御所掛

温泉に浸かり、ゴロゴロとヒルネをする時が過ぎ・・・・・・・
ついに宅急便到着の日がやってきた。
到着の知らせを受けて、住み慣れた湯治場から本館のホテルのロビーまで、 自分でバイクで受け取りに行く。
なんだか久しぶりにバイクに乗る感覚で、ココロも弾む。
小心者の親父は、本の中にカネを挟んで、無用な偽装工作を施していた。
でも、表紙に「カネは中に挟んであります」などと書いてあるので、何の偽装にもなっていない。
従業員の皆様に挨拶し、フロントの兄ちゃんに5000円を返す。
「宿泊費? 受け取る訳にはいきません」
との事だったけど、 強引に置いてくる事にした。
まあ、一泊分が僅か1000円だから安いもんだ。

その後、山を降りて鹿角市内に出向いてJAFにキーの代金を払い、その足で鹿角警察に顔を出す。
丁度、御所掛で世話になった刑事も居た。
「お蔭様で東京に帰れます。お世話になりました」
「おお、わざわざ顔を見せに来てくれたのか。帰り道、気を付けてな」
「ところで、あのぉ・・・・」
「何だべ?言ってみれ!!」
「一応、免許不携帯じゃないですか。乗って帰っても良いんですか?もし、途中で捕まったら・・・」
「う~ん。オレの口からは良いとは言えないが。ホレッ!捕まったらこの名刺を見せろ!そしてオレに電話するように言え!」

お守り的な名刺を貰い、一路東京を目指す。
何から何までトラブリ続きだった今回のツーリング。
ココから先は残金節約の為に、下道ばかりの長い長ぁい2泊3日の帰り道だった。

【その後】

結局、免許証入れだけは、八幡平のスキー場に投げ捨ててあるのを旅行者が発見し、観光協会経由で送り返されてきた。
「落とし物」と解釈したらしく、拾い主にお礼を言うようにとの一文と、観光パンフレットまで同封された書留めだった。
盗難届を出していたので、鹿角警察に見つかった件を一報入れると・・・
どうやら拾い主の秋田市の教師は、(恐らく形だけだろうけれど)取り調べを受けてしまったらしい。
申し訳ないんで、「いかにも東京!」といった絵柄のテレカを、拾い主宛に数枚送った。
その後の反応は何も無い。

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元記事(メインサイトです)

この記事へのコメント

  • yona

    こんにちは!!不謹慎ですがとっても面白い短編小説のようでしたわ。
    置き引き被害は大変だったけど、テレカくれたお巡りさん、旅館の賄い出してもらったり、5000円貸してもらえたり、皆さんの親切に助けてもらえましたね。
    後生掛温泉は2回も立ち寄った事あるけど入浴はしてません。
    1回目はまだ20歳。ボコボコ沸き立つ地獄を眺めてると、おじいちゃんが話しかけてきたけど、本格派のズーズー弁で外国語かと思いましたわ。
    私もチャリの前かご置き引き2回も合いました。2回とも5000円分くらい山盛り買い物でごっそりやられました。
    1回目泣き寝入り。2回目は交番に飛び込んで訴えたら、テレビの刑事ドラマみたいにチャリに白い粉ペンペンして指紋取って、私の指紋も取られました。えっ、私容疑者?!被害者なんですけど・・・。"(-""-)"
    指紋登録されてしまってるから、もし犯罪犯したらすぐ捕まるね。( ;∀;)

    2023年02月05日 12:54
  • ponies

    こんにちは。
    旅をしているといろんなことに遭遇しますね。
    大変でしたね、その時の腹立たしい気持ちよく解かります。
    私の娘も脱衣所で腕時計をやられたと言ってました。
    今では貴重品預かりが充実しているので利用しないと
    行けませんね。
    他人ごとではありません私も気を付けます。
    2023年02月05日 13:35
  • かっちゃん

    こんにちは
    早速のブログアップありがとうございます。
    不謹慎ながら私も楽しんで読ませていただきました。
    大変な思いをされて一生忘れられない後生掛温泉になったことでしょうが、人のやさしさにも触れた旅でしたね。
    今は温泉にもコインロッカーがあると思うので安心かなと思います。
    有料でもカギは絶対かけましょうね。
    2023年02月05日 14:08
  • ジュン

    凄い!驚きです
    お風呂で置き引き
    焦っていらっしゃる様子や
    親切な方々の様子
    手に取るように伝わって来ました
    お父さまも焦ってらしたのですね
    文章お上手ですね
    2023年02月05日 15:45
  • おぎひま

    yonaさん、コメントありがとうございます。


    なかなか良い経験をさせていただきました。
    それにしても、チャリ籠の置き引き、ヒドいやつですね。
    ヒトサマから盗んだものを食べて美味しいと思う、、
    その感覚が終わってますよ。
    2023年02月06日 10:20
  • おぎひま

    poniesさん、コメントありがとうございます。

    今となったら良い思い出ですが、
    しばらくは、温泉に入っていても気が気ではなく、
    ココロの底からクツロげませんでした。
    あの犯人は、飢え死に寸前だった人、、、
    そのように思っておきます。
    2023年02月06日 10:23
  • おぎひま

    かっちゃんさん、コメントありがとうございます。

    実は、、、当時の脱衣場にも有料ロッカーがあったんです。
    ダイジョーブだとタカをくくった結果ですね。。
    今となっては、イロイロと世の中を知れて良かったです。
    2023年02月06日 10:25
  • おぎひま

    ジュンさん、コメントありがとうございます。

    なんとも言えないドタバタ道中になりました。
    湯治場で寝泊まりしたのも良い経験です。
    気を取り直して再訪を、、
    などと思ってたのですが、もうウン十年も経ってしまいました。。
    2023年02月06日 10:31
  • 中村裕司

    やっぱり、靴下の中にお札を隠しとかないといけないですね。
    もっとも、風呂場で靴下を脱いだらお札も一緒に出て取られていたかも知れませんが(^^)。
    2023年02月06日 18:53
  • おぎひま

    中村裕司さん、コメントありがとうございます。

    そうですね、古典的な対策ですが、現実的ですもんね。
    ただし、知恵がリス並みなもので、
    隠したまま忘れてしまいそうです。。
    2023年02月07日 10:01
  • 山ちゃん

    こんにちは!
    いや~あっ、聞くも凄まじい大難儀に遭遇されましたね。
    幾ら不注意でも免許証、現金、バイクの鍵を一緒にしていたのが失敗でしたね。でも、地元の方たちの親切心が痛いほど判る気がします。ともあれ無事に帰れて良かったですね。
    山ちゃんは、遠出をする時は一日分づつの現金と、免許証類は別に保管するようにしています。
    2023年02月07日 11:52
  • おぎひま

    山ちゃんさん、コメントありがとうございます。


    その時はどうなる事やと思いましたが、、
    ある意味、アクシデントを堪能できました。
    お金の分割、、、そうですよね。
    今までダイジョーブだったからヘーキ、、、
    それが全てでした。。
    2023年02月08日 09:48
  • カスミッシモ

    大変な経験をされましたね。
    この経験がその後に活かされているのでしょう。
    2023年02月08日 16:37
  • おぎひま

    カスミッシモさん、コメントありがとうございます。

    もう、楽しく語れるようにはなりましたけれど、、
    被害総額は、アレやコレやで5万円ぐらい。。
    ああ、それを思い出したら、やっぱり悔しいです。。
    2023年02月09日 09:29
  • かにょにょ@横歩き

    なるほど!
    おぎひまさん大変な経験をなさいましたね💦当時のお金で5万円ですか!
    読み物としては大変に興味深くたのしく読ませていただきました😅
    読者のみなさんの盗難対策も参考にして自分の旅に取り入れようと思った次第です👍話は変わりますがわたしのダブルワークの就業先はとにかく盗難の話が多いのです。世知辛い時代になりました💦
    2023年02月16日 02:24
  • おぎひま

    かにょにょ@横歩きさん、コメントありがとうございます。

    とにかく、ロッカーの小銭をケチったらいけませんですね。。
    その昔、ワタクシがデパートのお歳暮のバイト(内勤。種分け係)をした際は、
    帰りに身体検査があった事を思い出しました。
    警察沙汰になったら人生を棒に振るでしょうから、
    小物を盗んだところで割に合わないでしょうに。。
    2023年02月16日 09:12

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